明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
原付市場では1月4日から整備初めでしたが、ベルト切れと思われる車両が入庫いたしました。
・エンジンはかかるし問題なく吹けるが前に進まない
・一ヶ月程前から最高速が10km/hほど遅くなった
・同時に上り坂でパワーが落ちた
目次
原因
ほぼ確実にベルト切れの症状です。特に一ヶ月程前からの現象がベルト切れを物語っています。
「エンジンはかかるが前に進まない」という症状からすると、エンジンの力をリアタイヤに伝える部品(まとめて駆動系といいます)の故障という事になります。ドライブベルトは駆動系の部品の一つです。ゴムでできていて自転車で言うチェーンの役割を果たしています。ゴム製品なので消耗品です。いつかは切れてしまいます。そして切れるまでには少しずつ伸びて細くなっていきます。伸びていくと力がきちんと伝わらず、最高速の低下やパワーの低下といった症状が現れます。
39800円スーパーディオの整備をしています。
ヒビの入ったベルトは新品に交換、擦りへったウエイトローラーも新品に交換させていただきました😄 pic.twitter.com/c4x7DvV3me
— 原付市場-マックスオートリサイクル (@nakaharaichiba) 2015, 6月 20
⬇の記事中では、駆動系を開けた時にベルトの幅を計っています
簡単に駆動系のしくみ
エンジンに直結しているシャフトから回転が伝わってきます。ドライブフェイスの影に隠れて見えにくいですが、奥に見える円盤状のパーツがプーリーといって回転数に応じてシャフト上をスライドします。
ドライブフェイスとプーリーでベルトを挟み込み変速をします。自転車でいうと前側のギアの役割です。ベルトが挟まれて径が大きくなると変速比が上がります。
同時にリア側は回転数が上がるとベルトが奥に落ち込んでいき径が小さくなります。自転車の後ろのギアと一緒です。
リア側の一番手前のパーツがクラッチです。こちらは変速が始まる前に一定の回転数でつながる(リアタイヤが回りだす)ような仕組みになっています。
実はエンジンは1分間に何千回転と回っていますので、このままの回転数でリアタイヤを駆動させると、とんでもない高速回転になってしまいます。そこで最後にファイナルギアといわれるギアボックスを介し適切な回転に減速させます。これは同時に回転数をパワーに変換しています。ファイナルギアはクルマ等と同じ金属製の歯車が入っており減速比は固定です。ミニ四駆のギアと一緒です。
エンジンは問題ないが前に進まないという時は、この駆動系のどこかが故障しています。今回は、最高速が低下したという点からベルト切れだろうとあたりを付けて修理を始めます。
さあ修理をはじめよう
用意するもの
・8mm、10mm、12mm、14mmのソケット
ディープソケットが使いやすいです。
・2番のプラスドライバー
・ゴムハンマー
・グリス
・パーツクリーナー
・ワコーズメンテルーブ
・交換用ベルト
純正同等の社外品です。1/3くらいの価格です。
あると便利なもの
・ペーパーウエス
整備をするなら何かと便利なペーパーウエス。
アストロとかコストコでも売ってます。まじでおすすめなアイテム。
・ワコーズスーパージャンボ
ワコーズブランドのパーツクリーナー
ちょっと高いですがそのへんのパーツクリーナーより良く落ちます。たくさん入っている気もします。
・プーリーロックレンチ
インパクトツールがない方はこれがないと駆動系のボルトは外せません。
エアクリーナーボックスを外す
プラスのねじを5本、ボックス下側の10mmを2本外します。
外側のカバーをとり、キャブレターとのジョイント部分のプラスねじを緩めてボックスを外します。ちょっと固いかもしれませんが、がんばって外しましょう。
エアクリーナーボックスが外れました。
駆動系のカバーを外す
次に駆動系のケースを外していきます。スーパーディオは前後二分割になっているので、両方外しましょう。ケース中央の1本と、外周を止めている8mmと10mmを全て外します。
ボルトの他にピンでも止まっています。このピンはズレ止めで特に固定はされていませんが、固着していて外れない事が多いのでゴムハンマーでひっぱたきましょう。全てのボルトが外れているのをよく確認してから、渾身の力で上下左右にバランスよくひっぱたきます。
しばらく叩いているとケースが外れてます。
やっぱりベルトが粉砕していますね。
駆動系のパーツを全て外す
ドライブフェイスとクラッチアウターを止めているナットを外します。インパクトがない場合はユニバーサルホルダーを使用して外します。
ドライブフェイス側のナットを外したところ
全てのパーツが外れました。あ、左隅にスターターギアのワンウェイクラッチが残ってる…もちろん後で外して清掃しましたよ。
パーツを点検し清掃する
ベルトの切れ方によっては、他のパーツを破壊している事もあります。よく確認しましょう。あちこちにベルトのかけらが入り込んでいますのできれいに取り除きます。
全てのパーツとケース内部をパーツクリーナーで清掃します。きれいになったらウエイトローラーに薄くグリスを塗ります。スターターギアのワンウエイクラッチにはメンテルーブを吹きます。キックペダル部分にはグリスを塗っておきましょう。
駆動系内部の余計なところにグリスやメンテルーブが付いてしまうと、ベルトが滑ったりして駆動がきちんと伝わらなくなるので気をつけましょう。パーツクリーナーはすぐに乾くので大丈夫です。
組み付ける
ドライブベルトは向きがあります。ベルトに書いてある文字が読める向きで組み付ければOKです。クラッチを手で縮めてベルトが奥に噛み込む様にして組み付けます。
こんな感じです。最後にドライブフェイスをつけます。
他の部品は外したのと逆の手順で組み付けます。
試乗してみる
ねじが余っていない事を確認して、工具を片付け試乗します。
最高速を確認したところ問題なく復活しました。良かった。
撮影、整備協力 Tomerry Scooter’s
無料の代車も多数ご用意してあります。
詳しくは原付市場での修理についてをご覧ください。
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